当団は昭和22(1947)年7月9人の先輩によってスタートし、
歌の好きな男声を広く迎えて大阪を中心に活動する一般合唱団です。
昨年(2017年)は創立70周年の年にあたり、ますます盛んに合唱を続けています。
この歴史の中で、2017年に亡くなった作曲家多田武彦氏は初期の団員であり、
指揮者として当団の力量を三段跳びで引き上げてくださいました。
また、東京混声合唱団桂冠指揮者田中信昭先生に2017年まで
17年にわたりご指導をいただきました。

最新情報

アルマ・マータ・クワイア第59回定期演奏会を2022年7月17日 住友生命いずみホールで開催いたしました。
演奏内容は、当ホームページ右に掲載した「YouTubeチャンネル」をご覧ください。
2022年7月24日
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「アルマ・マータ・クワイア第58回定期演奏会」を開催いたします。


開催日時:2020年11月22日(日)14時開演
場所:住友生命いずみホール
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本公演はお客様にマスク着用をお願いするなど「住友生命いずみホール」の感染予防策に則り開催いたします。
なお、客席数をホール定員の50%以下に制限する等のため、一般の方からのお申し込みは頂けません。
また、当日券取り扱いもございません。
恐れ入りますがご了承のほどよろしくお願い申し上げます。
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「演奏曲目」「曲目解説」は3月1日開催予定の通りです。
下欄をご参照ください。
2020年10月23日

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「アルマ・マータ・クワイア第58回定期演奏会」は、新型コロナウイルス禍の状況に鑑み
再延期することになりました
開催日時:2020年11月22日(日)14時開演
場所:住友生命いずみホール。
2020年6月17日

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 3月1日開催予定の「アルマ・マータ・クワイア第58回定期演奏会」は、新型コロナウイルスの感染拡大の状況に鑑み延期することになりました
⇒日時:7月25日(土)、場所:同ホール(共に予定)。
急なことで大変申訳ございませんが何卒ご理解賜ります様お願い申し上げます。

2020.2.27
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第58回定期演奏会を開催します。
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期日:2020年3月1日(日)14時開演
場所:いずみホール(大阪ビジネスパーク内)
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  =PROGRAM=
 Ⅰ 男声合唱組曲「優しき歌」

….. 作詩/立原 道造 作曲/多田 武彦 【指揮】上床 博久

…… 1.爽やかな五月に

…… 2.落葉林で

…… 3.さびしき野辺

…… 4.また落葉林で

…… 5.みまかれる美しきひとに

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 Ⅱ 『自由、そして未来へ』-時をつなぐ歌たち

…..【指揮】太田 茂之 【ピアノ】福島 久仁子

…… 1.「鷗」       作詩/三好 達治  作曲/木下 牧子

…… 2.「鳥が」      作詩/川崎 洋   作曲/新実 徳英

…… 3.「海景色」     作詩/北川 冬彦  作曲/高田 三郎

…… 4.「家居に」     作詩/林 望    作曲/上田 真樹

…… 5.「未来」      作詩/谷川 俊太郎 作曲/高嶋 みどり

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 Ⅲ 「シラーとゲーテの詩によるシューベルト男声合唱曲」

…… 作曲/F.Schubert 【客演指揮】松井 義知

…… 1.Unendliche Freude (詩/F.v.Schiller)

…… 2.Dessen Fahne donnerstürme wallte (詩/F.v.Schiller)

…… 3.Die Zwei Tugendwege (詩/F.v.Schiller)

…… 4.An den Frühling (詩/F.v.Schiller)

…… 5.Gesang der Geister über den Wassern (詩/J.W.v.Goethe)

…… 6.Liebe (詩/F.v.Schiller)

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 Ⅳ 「人生の喜び」

…… 【指揮】上床 博久  【ピアノ】福島 久仁子

……・ Wein,Weib und Gessang(酒、女、歌)
………… 作曲/J.Strauss Ⅱ 作詩/J.Weyl 訳詞/林 茂紀

……・他

 

《曲目解説》

=StageⅠ= 男声合唱組曲「優しき歌」

..いつの間に もう秋! 昨日は
….夏だった…… おだやかな陽気な
……陽ざしが 林のなかに ざわめいてゐる
……..ひとところ 草の葉のゆれるあたりに

【多田組曲「優しき歌」について】
..上掲の詩は立原道造の詩集「優しき歌」所収の「また落葉林で」の冒頭の1節ですが、この組曲を作曲した多田武彦さんは、「あの高原の大気のように透明で、あの高原の落葉樹林のように美しく変化(へんげ)する立原道造の詩風に、学生時代から心酔しきっていた…」とし、「これをモノトーンのア・カペラ男声合唱組曲『優しき歌』にまとめた。」とされています。
..この組曲は100曲近くに及ぶ多田さんの男声合唱組曲作品中の第29番目に作曲されたもので、多田さん42歳のときの作品です。
..この組曲は、立命館大学メンネルコールの昭和46年度卒業生から「卒業記念として、後輩の部員たちに贈るため新曲を作曲してほしい」という依頼によって作曲されたもので、その後、後輩部員たちによって京都会館第一ホールで開かれた第10回明立交歓演奏会(明治大学・立命館大学)で初演されました。
..立原道造の詩に作曲された多田さんの組曲作品は、平成24年に私たちアルマ・マータ・クワイアが初演(指揮・上床博久)した「眠りの誘ひ」を含めて6作ありますが、「優しき歌」はその第1作です。
【立原道造と詩集「優しき歌」について】
..立原道造は1914(大正3)年7月、東京市日本橋区橘町3(今の中央区東日本橋3丁目)の商家に生まれ、第一高等学校から東京大学工学部建築学科を卒業して石本建築事務所に勤務した将来を嘱望される建築家でした。
..在学中から短歌をよくし、次いで詩に傾注し、堀辰雄、三好達治、丸山薫らが主宰する詩誌「四季」の同人として活躍します。
..道造は、1937(昭和12)年7月、23歳の時、自ら企画し編集した詩集「萱草に寄す」を風(ヒヤ)信子(シンス)叢書の第1集として、また、同年12月に詩集「暁と夕の詩を」同叢書の第2集として出版しました。
..そして翌年夏、軽井沢町信濃追分の油屋旅館に逗留して風(ヒヤ)信子(シンス)叢書第3集「優しき歌」のまとめに没頭しましたが、宿痾の病は道造の体を蝕み、翌1939(昭和14)年3月、志を果たすことができないまま、24歳8か月の若さで夭折します。
..これは後に、道造の側にいてその制作過程をつぶさに見ていた詩人、小説家、評論家の中村真一郎の意見に従って堀辰雄が再現し、1947(昭和22)年に角川書店から出版された遺稿詩集です。
..「愛」に主題をおいたソネット(1篇が14行からなるヨーロッパの定型詩)形式による11篇の恋愛詩集となっています。
【そして、再び男声合唱組曲「優しき歌」について】
..多田武彦さんは、詩集「優しき歌」から、「爽やかな五月に」「落葉林で」「さびしき野辺」「また落葉林で」の4篇と未刊詩稿から「みまかれる美しきひとに」の1篇を選んで作曲しました。そこではリリカルな初々しさをもつ魂と魂との対話をモチーフとして愛のうつろいが歌われます。
..終曲「みまかれる美しきひとに」の最終行の詩句《林檎みどりに結ぶ樹の下におもかげはとはに眠るべし》― 合唱のコーダの部分は、みまかれる(亡くなった)美しきひとを通して愛の永遠性が歌われ、テノールの独唱を受け継いで、合唱が静謐に、消え入るように歌ってこの組曲を終わります。
……………………………………..(B2 増田 博)
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=StageⅡ= 「自由、そして未来へ」 
..ポップスとクラシックという言葉があります。ポップスを「流行の音楽」、クラシックを「時代を超えて定着した音楽」と表現したときに、ポップスがクラシックになるには数あるハードルを越えていく必要があります。

..その一つに世代を超えて取り上げられることがあると思います。今を生きる音楽家とともに歩みながら、ポップスからクラシックへと音楽を昇華させる、このことは喜びではないでしょうか。

..アルママータはそんな挑戦を与えられているような気がします。なんとか今の作曲家を応援したい。
微力ではありますがその役割に精一杯こたえたいと思います。
・いつまでも若くありたい ・前向きに生きられる ・今という時代に生きる
..アルマの皆さんと歌うにあたり、このような思いを持って以下の5曲を選びました。

1.鷗
..木下牧子の代表作といっても過言ではないくらい、ソロでも合唱でも良く歌われる曲。何度も繰り返される「つひに自由はかれらのものだ」のフレーズ。それは、そこで歌われる自由が、それまでいかに切望しても「かれらのもの」にはなり得なかったことを示す。
..三好達治がこの詩を書いたのは昭和21年。長かった戦争が数多の犠牲の果てに終わった今、詩人は目の前を飛び交う鷗に万感を託してうたう。

2.鳥が
..普遍的なこと、当たり前のことが素晴らしいことだと教えてくれる曲。そういう中に私たちは生きているんだと。
..詩人は次のように語る。「鳥も人も花も、見た目の形状ほど、実はお互いに変わってはいない、血のつながった存在なのだという気持がわたしにはある。」(「やさしい魚」1984年男声版より)

3.海景色
..自然は私たちの理解できる範疇を超える大きな世界。どこまでも広がる空と海。その果てしない風景の静けさにひたる詩人の耳を突如破った声々・・・1963年に作曲された男声合唱組曲「海」の第5曲。

4.家居に
..レクイエムとして作曲されたが、悲しみということを前面に出すわけではなく、死者が今を生きる人を支えているようなイメージなのだろうか。素朴でありながらも温かさ、懐かしさが感じられる曲。
作曲者はこう語る。「死を悼むレクイエムではなく、温かい気持ちで死者の魂と心を通わせられるようなレクイエム。そういう鎮魂曲を書きたい、と思いながら作曲した。」(組曲「鎮魂の賦」2014年より)

5.未来
..若く希望にあふれている、常に前向きにエネルギーを感じられる曲。「青空にむかって僕は竹竿をたてた」ただそれだけの行為の先に象徴される「未来」。無限の歴史を抱きつつどこまでも続く未来に、自分も加わろうという若々しい意志。詩は1950年18歳の作。谷川俊太郎20歳の第一詩集に序文を書いて世に送り出した達治の「鷗」から谷川の「未来」へ。作曲者による2013年編曲版で歌います。

……………………………………..(太田 茂之)
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=StageⅢ= シューベルトの男声合唱曲
シューベルトと言えば、「野ばら」「魔王」「ます」や歌曲集「美しい水車小屋の娘」「冬の旅」「白鳥の歌」などの歌曲(600曲以上!)、「未完成交響曲」などで日本では古くから愛され親しまれてきた。
1797年から1828年というわずか31年の生涯で生み出した作品は九百数十曲に及ぶ。
歌曲の他にもピアノソナタや弦楽四重奏曲など多くの室内楽曲から、8曲の交響曲、ミサ曲、オペラなど広いジャンルにその創作は及ぶ。では合唱曲はといえば、演奏される機会も多いとは言えず、そう知られていないのではないだろうか?
彼の本格的な音楽活動は11歳から16歳まで所属した宮廷少年合唱団(後のウィーン少年合唱団)及び学生オーケストラに始まる。オーケストラでは、やがてコンサートマスターに就き、新しい時代を切り拓くベートヴェンの音楽に、生涯に渡る影響を受けることになる。また既に14歳頃から多種の作曲を始めている。
寄宿制神学校中退後、彼は父親の教職に就けという期待に応えられず、友人の家を渡り歩いての作曲と音楽活動にその生涯を送ることになる。彼は多くの友人に恵まれた。合唱曲は、書けば彼らが歌ってくれた。(筆者の手元にある「世俗合唱曲集」には132曲が収められ、作曲した詩人は40人に及ぶ。)が、当時オーストリアではメッテルニヒ体制のもと、多人数の合唱団・合唱協会は禁止され、1843年ウィーン男声合唱団の結成まで待たねばならなかった。この合唱団はシューベルトの多声歌曲・合唱作品を多く取り上げ、その普及に努めた。そのおかげで彼の魅力的な合唱曲が今日に伝えられることになったと言えよう。

今回取り上げる6曲はシューベルトの16歳から26歳の間にシラー、ゲーテの詩に作曲されたものである。
1、2曲目はシラーの詩Elysium(楽園)による。後にベートヴェンによって作曲される交響曲第9番「合唱」の詩につながるFreude(歓喜)やElysiumの世界が、苦しみ多い現実や戦いに明け暮れる現世に対比して歌われる。3曲目は「徳へ至る道」について、4曲目は長い冬が過ぎて再び美しい春を迎える喜びが歌われる。
5曲目はゲーテの詩による。スイスのラウターブルンネンの谷を訪れたゲーテが、落差300mのシュタウプバッハの滝にインスピレーションを得て書いたと言われる。落下し変転しながら永遠に循環する水のめぐりに人間の魂を投影した詩を、20歳のシューベルトは見事な合唱曲に仕上げている。
6曲目は「愛」。愛は自然の調べを通して、悲嘆にくれる心にも歌いかける。そして日常の暮らしを営むのに欠かせない思慮分別や知恵も、愛の前では道を譲れと歌いあげる。

なお5、6曲目の間には、シューベルトのピアノ小品イ長調が演奏される。
このステージが、シューベルトの友人たちによって始められた、ウィーンでの音楽の集い「シューベルティアーデ」の一端でも彷彿とさせてくれるものになりますように!
(T1 林 茂紀 )
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=StageⅣ= 「人生の喜び」
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..このステージでは、昨年と同様J.シュトラウスによるウィンナ・ワルツの名曲を新訳で初演します。
..それを柱に、若い頃から愛唱してきた歌たち(「Vive la Compagnie」「人生を楽しめ」「希望(のぞみ)の島」)で構成しました。
テーマは「人生の喜び」。我々にとって、それは何と言っても一緒に歌い合うことの喜びです。
..それは広さ・深さ・高さのどれにおいても限りはありません。また、歌うことは若さの源でもあります。
..本日の最終ステージが、皆さまにとっても心くつろぐ楽しいひと時になりますように!
ウィンナワルツの楽しさ
..音楽の持つ様々な要素のうちヨハンシュトラウスのウィンナワルツには音楽の「楽しみ」「喜び」が満ちあふれていますが、楽しく歌うだけでは目指す音楽は出来上がりません。
..しかしこの「楽しさ」は大きな魅力であり、歌うと心が解放され高揚してきます。
..この「喜び」を大きな糧にしながら、練習してまいりました。聴衆の皆様にも楽しんで頂ける演奏ができるよう願っています。
……………………………………(指揮 上床博久)
Wein,Weib und Gesang(「酒、女、歌」)の訳詞に挑んで
. 昨年の「美しく青きドナウ」に続いて、J.シュトラウス2世の名曲「酒、女、歌」を日本語で歌いたいと指揮者の上床さんから声がかけられた。原譜は既に渡され、途中まで訳詞を試みてもいた。
..ウィーンフィルのニューイヤーコンサートでよく演奏されるこの名曲もまた「ドナウ」同様ウィーン男声合唱協会から委嘱されて作曲したものだった。(1869年、仮装音楽会で初演)
..宗教改革でよく知られるマルティン・ルターが語ったという「酒、女、歌を好まぬ者は馬鹿だ」という言葉を柱に、合唱団員のJ.Weylが作詞。
..そのテキストの一語一語を辞書片手に訳していったのは2017年5月末、手術後の病院でだった。
..長い序奏と4つのワルツからなる歌は愉快というほかなく、朝の診察が終わると手提げに楽譜・テキスト・辞書を入れて、明るく広い談話室にいそいそと通った。
..逐語訳をもとに歌詞を作っていく作業は、術後の痛みを忘れさせてくれた。ワルツ2まで訳したところで退院。
..その後寝かしてあった資料を再び取り出して、本気で訳詞を作る作業に取りかかることになった。
..原詞のストーリーやキーワードを生かし、訳詞が楽曲としての構造とズレないように、とは「ドナウ」の教訓としてあったが、どうしてもクリアできないところが残り、複数の訳を書き込んで今回もまたピアニストの福島さんにアドヴァイスをいただいた。
..その後、指揮者の上床さんと検討・手直しを重ね、楽譜を渡した後は団員の皆さんと歌いながら推敲した。
..曲は以下のような構成からなっている。
1.序奏:神様は孤独なアダムにぶどうを授けたが・・・彼とイヴの歌こそ合唱の始まり。
..楽園を失っ た我々には天から3つの贈り物が遺された。それが「酒、女、歌」だと高らかに歌う。
2.ワルツ1 酒の歌:さあ注げ、ワインでさえあれば何でもいい。できればフランケンワイン、無ければ愛しいオーストリア産の。
..飲んで嫌なことはすべて忘れようと歌う。
3.ワルツ2 女の歌:天使のような娘はそう居ない。どんなに可愛くても小さな悪魔はひそんでいる。
..でも恋をして一緒になったら、すべてを分かち合って生きていけと歌う。
4.ワルツ3 歌の歌:泉のように暮らしに音楽を。
..そうすれば貧しくても楽しい。どんなに辛いことがあっても、天は胸の奥から湧き上がる歌を授けてくれたと歌う。
5. ワルツ4 まとめ:1を受けてルターにまつわる逸話から始め、愛する人・酒・歌さえあれば、怖れるものはない。
..泣いて嘆いても何も始まらない、陽気にやろうぜと歌い上げる。
――ウィーンっ子の心意気満載の歌、日本語訳全曲版の初演です。
( T1 林 茂紀 )